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ネットワークビジネスと新興宗教の類似性Ⅴ(コルベットスティングレーC2 1963年型) [車の絵]

 自分がネットビジネスのテンションを維持できなければ、子会員を維持することも、増やすことも不可能だ。 私が勧誘した子会員は最も多い時で11人だった。そのうちユーザー会員は1人だけで、あとはお付き合い会員にすぎなかった。ビジネスセミナーに出席した直後は、新規会員獲得に前向きになるのだが、翌日からはテンションが下がり続けた。もともとサイドビジネスとして興味を持っただけで、私には本業が大事だった。
 儲からないユーザーの注文と自家消費のために、ずるずると7年間もネット会員を続けたが、ついに見切る時が来た。ネットビジネス会社の親会社のスーパーDが破綻して、事業を整理することになったのだ。
 倒産した場合の日本経済へのダメージを回避するため、スーパーDは産業再生機構の管理下に置かれた。子会社のネットビジネス会社は東京の呉服店に売却された。私はそれを自分への口実に脱会した。
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ネットワークビジネスと新興宗教の類似性Ⅲ(アルファロメオ・ジュリエッタ 1956) [車の絵]

 ネットワークビジネスの会員になった当初は、専用カードでグループ会社のスーパーやコンビニ等で買い物をしてポイントを貯めるだけで、私はビジネスそのものには関心がなかった。それでも弟と弟の友人が公民館を借りて開催するセミナーには律儀に毎回顔を出した。そのセミナーでビジネスの成功話や商品の薀蓄を聞き続けるうちに、私もビジネスの可能性に賭けてみようという気になった。家の中の日用品がネットワーク会社のそれに置き換わっていった。自分が使って納得できれば人にも自信を持って薦めることができた。ユーザー会員になってほしくて、知り合いや友人に商品をタダで配った。購入を希望する人が現われれば原価で商品を渡した。
 これが私の失敗のもとだった。商品を売っても利益が出ない。ユーザーにしてみれば、原価で手に入るのなら、わざわざ入会金や年会費を払ってまで会員になる必要がない。ビジネスとしての魅力をアピールしてやっと会員になってくれた人も、所詮私に対するお付き合いレベルの入会で、商品を自分で買い、人にも薦めるような会員は現われなかった。私は5000円のボーナスを獲得するために、毎月56000円分の日用品を購入し続けた。
 妻は苦しい家計に耐えていた。購入累計額が80万円を越えた頃、妻が私に訴えた。
 「サイドビジネスを始めたのに、どんどん貧乏になっていく…。」
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ネットワークビジネスと新興宗教の類似性Ⅱ(ポルシェ908ロングテイル1969) [車の絵]

 スーパーDが潤沢な資金を注ぎ込んで開発した高品質の商品は、既存の流通ルートには卸されず、マルチの会員だけに直接販売される。入会金5150円を払って会員になると、小売価格の75%で商品を購入できるので、小売をして稼ぐことができる。自分から始まるグループの月間購入金額が56000円を超えると翌々月にボーナスとして5040円(9%)が自分の口座に振り込まれる。月間購入金額が14万円ならボーナスは16800円(12%)、70万円なら106000円(18%)と増えるが、自分の子会員にボーナスが発生した場合は、その分を差し引かれる。グループが月に140万円以上購入すると、平会員からプリディレクターに昇格して336000円(24%)のブラッサムボーナスが支給される。それを3ヶ月維持できれば、晴れてダイレクトライフクリエーター(DLC)に昇格し、年に一度の豪華なハワイ旅行に招待される。自分に連なる会員からDLCが出て自分のグループから独立すると、その独立したグループの売上の8%がリーダーシップボーナスとして自分に入ってくる。このボーナスは著作権などと同じ権利収入なので、マルチ会社が存続する限り、半永久的に貰えるものだ。DLCを3人独立させると年収1千万くらいになるという。 1997年当時のこのマルチ会社には、288名のDLCが存在した。 月間280万円の実績で112000円(4%)のムーンボーナスを別に貰えるムーン会員が39名、DLC3人を独立させるとグループの売上の2%が貰えるジュピター会員が41名いた。さらにその上にヴィーナス会員13名、サンディレクター会員5名がいた。
 私の弟をマルチに引き込んだ同期生を勧誘したT氏は、30歳代の普通のサラリーマンだったが、すでにDLC会員となっており、副業のおかげで、ベンツを所有していた。T氏に初めて会った時は、「胡散臭い若造」に警戒していたが、マルチの勉強会で何度も顔をあわせるうちに、T氏に尊敬の念を抱くようになった。
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ネットワークビジネスと新興宗教の類似性Ⅰ(B・A・Rホンダ007・ジェンソン・バトン) [車の絵]

 私が新興宗教から足を洗ってから数年後のことだ。弟が高校の同期生から誘われてネットワークビジネスに入会し、勤務時間外に親戚や友人・知人への勧誘活動を始めた。
 私のところにも、弟が友人を同伴してある会社の説明に来た。
 当時年商2兆円で流通業日本一のスーパーDが、ネットワークビジネス専門の子会社を設立してから10年が経過していたが、マルチ商法に全く興味のない人間には、聞いた事のない会社名だった。会員制通信販売といえばミキプルーンを利用したことがあるくらいで、アムウェイやニュースキン等、マルチ業界の競争の激しさとビジネスチャンスの多さに興味を持った。
 ちょうどバブルが崩壊して生業が衰退しつつあったので、副業としてうってつけだと思い、弟の勧誘に賛同した。
 マルチにおける勧誘活動は、ちょうど新興宗教で「菩薩行」と称して、新たな信者を入信させるようなものだ。
 マルチでは入会させた会員の売り上げ貢献度によって、自分に報酬が分配されたり、自分がより有利に商品を買えるようになる。新興宗教では、より高い位の「法名」をもらったり教団での地位があがる。どちらもピラミッドの頂点にいる僅かな人々の優雅な暮らしを支えるために、その他大勢の人々がマインドコントロールされたように奉仕活動をするのだ。
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新興宗教ちょいかじり9(フェラーリ375) [車の絵]

 バスは高速道路に入ると本州へ向かって走った。バスの室内は消灯して眠りモードに入っていたが、旅の安全を祈願するために、前の席から一人ずつお経をあげることになっており、お経と順番が気になって眠れなかった。私に一巡目のマイクが周ってきたので、頭上の室内灯を点けた。人前で一人でお経を唱えるのは初めての経験だっが、日頃の精進のお蔭でなんとか終えると、私の斜め前に座っている老女が私のお経が上手だと褒めた。カラオケではないが、褒められて内心喜んだ自分がいた。
 バスが休憩の為に高速道路のサービスエリアに停車すると、乗客は解放された気分になり、寛いだ。
 私は、長い道中を考えて、牛丼とコーンスープで腹ごしらえをした。
 短い休憩のあと、再びお経漬けの缶詰状態でバスは高速道路をひた走った。やがて一般道に降りると閑静な住宅街の一角でバスは止まった。
 「皆さん、ここから歩いて〇〇〇まで行きます。近所迷惑にならないよう私語は謹んでください。」
 夜中の3時50分、白装束の一団がバスからゾロゾロ降りてきて、表札がなければ普通の家と見紛う建物に消えていく。知らない人が見たら恐くなって警察に駆け込むだろう。
 巡礼最初の聖地となる教祖生誕の場所で、一行はボソボソとお経を唱和し、功徳(賽銭)を積んだ。
 このあとバスはいよいよ本山に向かった。
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新興宗教ちょいかじり8(ランボルギーニ・ディアブロ) [車の絵]

 いよいよ大晦日がきた。一年間の区切りの仕事を手早く終えて6時に帰宅した。例年なら風呂上がりに晩酌をしながらテレビを見て年を越すのだが、この時は夕飯を急いで済ませるや心配する家族をよそに車で家を飛び出した。小倉東インターで待ち合わせていた信者4人を拾い、高速道路を西へひた走った。
 7時半に福岡市の教団支部に到着した。りっぱな施設だが駐車場は狭くマイカーでいっぱいだった。 
 隣の空地に車にキーを挿したまま置いておくように指示された。
 支部に入ると教団が名づけた氏名の書かれた名札を支給された。賽銭と名札代をおさめたが、事前に中学教師から仏所巡りツアー中は500円硬貨と1000円札を充分に持っておくようアドバイスされていたことに感謝した。
 ツアー参加者は、各々教団が用意したお遍路の白装束に着替え、持参した襷をかけ、数珠を首からぶらさげた。
 全員が揃ったところで、お経を唱和して出発式を終え、中型観光バス2台に分乗した。
 最初の仏所、今は亡き教祖の出生の地に向けてバスが動きだした。
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新興宗教ちょいかじり7(ホンダ・ビート) [車の絵]

 家族や親族、会社が善の世界に入れるようにおつとめをしている、と自分を納得させつつ、毎日一時間以上がお経をあげることに費やされた。 妻や子供たちは、私が宗教に取り付かれたようで心配していた。
 中学教師から、教団支部の夜の集会に出るよう促されれば三度に一度は応えた。こうして数ヶ月が過ぎたが先祖の声を聞くような霊的な現象は起きなかった。さらに精進するには、教団の大きな行事が行なわれる大祭に参加して三日間「仏所巡り」をしなければならなかった。日曜日に一日だけ休むことさえ儘ならないのに3連休など到底無理だった。休めるとしたら会社が1年に一度だけ休業する正月の3連休しかない。
 正月は家族と祝い、初詣に行くのが楽しみだったが、正月の大祭に参加するにはこの機会しかなかった。
 私は中学教師の誘いに応じて、仏所ツアー参加費用の12万円を託した。
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新興宗教ちょいかじり6(トライアンフTR3A) [車の絵]

 教団の本山で行事が開催される日に、私が会社を休める時が来るのを待った。
 初秋のある日曜日、直前に仕事が増えて休みにくかったが、『大事な客の頼み』を言い訳に休暇をとって入山式に臨んだ。
 朝6時に、九州自動車道の小倉東インターに集合して、信者の一人が運転するワゴンに便乗した。中学教師意外に老夫婦二組、中年の女性の二人連れ、私と同年代の男性一人が参加していた。
 高速道路を2時間ほど走って目的地に到着した。本山のゲートの横に守衛室があり、赤いブレザーに白いズボンを穿いた職員が笑顔で信者を迎えていた。(この東京オリンピックの日本代表のようなコスチュームは教団の売店で買い求めることができ、古参の男性信者のユニホームのようであった。)
 信者が大ホールに200人ほど集まると、お経の唱和が始まった。舞台上に法衣を着た老女の導師が5~6人の女性を従えて、お経を唱えた。私たち新参者は前の方の椅子に座らされた。
 やがてお経が終わると、導師が新参者の前に立ち、一人一人に七文字を書いた白いたすきと、レイのような大きな念珠を、首にかけてくれた。これで霊的な力が授かるかもしれないと、少し緊張した。
 一連の儀式を終えて、自由時間があったので、立ち入ることが出来る範囲で道場や資料館を見学した。
 散会する前に新参者は再び大ホールに集合した。入信することで生まれかわったという意味なのか、新しい名前を書いた紙とIDカードを職員から配られた。私の名前は偶然か故意か亡き父と同じ読みだった。
 カード電卓のようなIDカードにはICチップが内臓されており、教団の施設のゲートを通っただけで、本部のコンピューターに参詣の記録が残るようになっていた。
 家に帰りついた時は暗くなっていたが、明日から新しい世界が始まるようで、気分は晴れやかだった。
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新興宗教ちょいかじり5(ポルシェ906) [車の絵]

 私の入信を教団に届けるために、住所・氏名・生年月日・電話番号・勤務先等、私の個人情報をさらけ出した。お祈りの対象となる題目塔と経典を授かった。もちろんただではなかった。
 朝の起床時と夜の就寝前に必ずお経をあげることが私に課された。
 さらに先祖を供養するために、できるだけ多くの先祖を捜さねばならなかった。捜し方も指示された。
 まず役所に行って、自分の家の除籍謄本を取り、そこから、除籍者のルーツを調べて、その出身地の役所に手紙を送る。手紙には、「家系図を作るため、可能な限り先祖の除籍謄本を送って欲しい」旨を書き、返信用封筒、謄本の手数料として切手を2000円分同封する。
 判明した先祖の氏名は、中学教師が報告を求めてきた時に逐一教えた。先祖は氏名が「御宝帳」に記載されることであの世で救われるとのことだった。(このおかげで詳しい家系図が出来上がった。) 
 素直に教えに従っていたが、正式な信者になるためには早い時期に本山で入信の儀式をしなければならなかった。
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新興宗教ちょいかじり4(シトロエン・クサラ) [車の絵]

 お経が終わると支部長らしき人が前に出て、経典の講釈をしたり、教団の行事を告知したりした。
 一時間ほどで散会となり、皆が席を立った。私は友人と少し話しをした。「朝晩、お経をあげてるんてね。」「仕事がうまくいくようにね。」それ以上宗教は話題にならなかった。
 翌日、中学教師が「集会はどうでした。」と勧誘の電話をかけてきた。「私の家の宗派と違いますから、よくわかりません。それに妻の実家がお寺さんなんで、敢て改宗するというのも…。」「教師と(他派の)僧侶は人を導く立場にあるから、なおのこと罪深いんですよ。」妻の親戚には聞かせられない言葉だった。
 その後も中学教師から度々電話があり、ビジネス上の呼び出しでこちらから訪問する機会も増えた。
 その度に入信を勧められるので、いつまでも私の気持ちをうやむやにしておく訳にはいかなくなった。
 「私が興味があるのは、『他の宗教とは違う』というあなたの宗教が、霊界と現世が繋がっていることを証明できるかどうかです。」
 「そのためには、まず入信してください。」
 私は証明が果たされなければすぐに脱退するつもりで、とりあえず入信することにした。
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